−知識を高める"知"−

 
Strength and Conditioning Specialist(S&C)
として活躍するには、とてもたくさんの知識が必要になります。
人間の体のこと、いわゆる解剖学や生理学の知識はもちろん
のこと、動作解析(Biomechanics)や運動生理学等、運動を
通じて人間の体がどのようになっていくのか、といった知識も
求められます。こうした基礎的な知識に加え、S&Cには特に
筋神経生理学、トレーニング科学といった分野に深く精通して
いなくてはいけません。さらには、栄養学、スポーツ心理学と
いった分野も知っておかなくてはいけないでしょう。S&Cとして活躍するために必要なデータは、限りなく日々進化し続けているので、一人前のプロとしてやっていくためには、こうした様々な分野の情報とデータを常に追いかけ、自分の知識の引き出しを増やし続けることが必要となります。

 筋力トレーニングを行ったことのある方であれば、誰でも一度は"トレーニングをするときは、反動を使わず、多少ゆっくりめに、1セット8−12回くらい出来る重さでやってみましょう"という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。そのくらいでやるのが丁度いいから、といってしまえばそれまでですが、この定義に隠された科学的根拠を知ることこそ、S&Cにとって最も重要なことなのです。

 少々細かい話になりますが、筋肉には大きく分けて、細い繊維と太い繊維があります。いわゆる筋力トレーニングでよく刺激され、筋肉が強くなったり太くなったりする結果を作るのは主に太い方の筋繊維で、筋力トレーニングを通じてこの太い筋繊維がしっかりと刺激されることが筋力UPのカギとなります。研究データによれば、この太い筋繊維が1セットのトレーニングの中で十分に力を発揮できる時間は、だいたい40−70秒といわれています。1回の曲げ伸ばしを、反動が起こらない範囲で、ゆっくりめに行うと、だいたい6秒くらいになりますので、それを8回繰り返せば48秒、12回繰り返せば72秒ということになります。反動を抑えて、関節等に負担をかけず、太い筋繊維のエネルギーが持続できるギリギリの範囲内で筋肉を目一杯刺激することが、筋力を最も安全に、効果的に、そして効率よく高めていくという科学的実証があることから、前述したようなアプローチが生まれてくるわけです。

 こうした科学的な根拠を十分に踏まえた上で、S&Cが選手にトレーニング指導を行うことは、トレーニングにおける安全性を高めるだけでなく、選手のやる気UPにも繋がります。選手に対して、"じゃあ、だいたい10回くらいやってみて"とただ言って指導するのと、"こうした様々な理由があるから、10回頑張ってみよう"というのでは、どちらの説明の後に、選手が良いトレーニングを実践してくれるでしょうか?選手自身が本気になって体を"つくろう"と思わなければ、体は一向によくなってはいきません。ですから、選手を本気にさせるアドヴァイスをS&Cができるかどうかは非常に重要です。

 科学的な"知"を持つことは、S&Cにとって自分が提供する技術や方法が安全で効果的なものであるかどうかを実証し、確信する最も良い方法であると同時に、"からだをつくっていこう"という選手の取り組みにおける精神的な部分を大きく支えることに繋がってくるのです。こうした点から、S&Cとして活動するためには、科学的な情報に耳を傾け、日進月歩で進化し続けるこの分野の知識とデータを日々追い続けなくてはならないのです。

 
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